世にも毛妙な物語 目次


第一話 オールフリーという名の脱毛サロン
第二話 ムダ毛の価値観
第三話 ウブ毛の記憶
第四話 脱毛ルーム ← 今あなたが見ている毛妙なページ
第五話 悪戯なムダ毛


8月某日。


とある洋館の大広間。床は全面大理石。隅には暖炉。
大広間の真ん中には、高級そうな大きな長テーブルが置いてあり、
その上には、豪華な食べ物や飲み物が所せましと並べられている。


暖炉の前で気持ちよさそうに寝ている小柄な若い女性。
彼女の名は高田理子(たかだりこ)。22才独身。


大学4年生の8月なのに就職が決まらず、毎日面接の日々。
お酒が大好きでこれまた毎日のように飲み会に参加している。
小柄だが気が強く、はっきりとモノを言うタイプである。


人の話し声で高田理子は目を覚まし、体を起こし周りを見渡すと、
大広間には彼女の他にも4人の若い女性が。


高田理子「ここは?どこ?あんたたち誰よ?」


浜崎陽子「そんなのこっちが聞きたいねん!
     あんたこんな状況やのに、随分気持ちよさそうに寝てたな。
     他のみんなはとっくに起きてるで。めでたい奴・・・・・」


高田理子を含めた5人とも、目が覚めたら、この大広間にいたようだ。


浜崎陽子「で、みんなパジャマなのに、なんであんただけスーツなん?」


高田理子「昨日面接行ってて。で、そのまま深夜まで友達と飲み会してて・・・
     家に帰って着替えずにそのまま寝てて・・・起きたらここにいた・・・」


浜崎陽子「うわぁーだらしない生活してんなー!
     そんなだらしない奴、面接でとってくれる会社なんてあらへんで!


     あっ!あんた腕時計したまんまやんか!それは役に立ちそうやな!
     だらしないのも、こういうとこで役に立って良かったやんか!
     この大広間に時計あらへんし、みんな腕時計してへんから!」


高田理子「・・・感じ悪!さっきからあんたさ!私に対してだけ態度でかくない?」


浜崎陽子23才独身。生まれも育ちも関西で、阪神の大ファン。
身長170センチと女性にしてはかなり大柄。
ホームページ制作会社でディレクターをしている。
仕事は抜群にできるが、口が悪いのがたまに傷。
思ったことはすぐに口にしてしまうタイプ。


浜崎陽子「そんなこと今どうでもええんちゃう?
     それより私たち5人、相当やばい状況かもしれへんで?」


高田理子「・・・・・うん、やばい状況っていうのは、まだ寝ぼけてるけどなんとなく分かる・・・
     他のみんなは普通に家で寝てて、朝起きたらここにいたってこと?」


浜崎陽子「せやねん。今からみんなでドア開けてみよか?ってゆーてたとこや。」


大広間には窓はなく、ドアは四方に4つある。


1つ目のドアを開けようとするが、向こう側から鍵がかかっているようだ。
2つ目・3つ目のドアも同じように鍵がかかっていて開かない。


高田理子「残りは1つか・・・もしこれ開かなかったら・・・」


浜崎陽子「うちは最後のこのドアは開くような気がするで!
     よし!いくで!せーーーの!」


ガチャ!


浜崎陽子「ほらな!開いたやろ!女の勘ってやつや・・・う・・・」


高田理子「なーんだ。ただのトイレじゃない!これじゃあ外に出られないじゃない!」


トイレには窓があるが、人が出入りできる大きさではない。


仕方なく、鍵のかかっている3つのドアに戻り、刑事ドラマのように
女5人で「いっせーの!」で体当たりしてみるが、女の力ではビクともしない。


何者かがここに閉じ込めようとしている意図が感じられる。


浅田百合「うわわわわ・・・ここってもしかして・・・密室じゃないですか?
     もう嫌だ・・・怖いよぅ・・・私たちどうなるの?!」


浅田百合26才独身。工務店で事務員をしている。
常にオドオドしていて、ネガティブな考え方をするタイプ。
24年間彼氏はおらず、休みの日も家で1日中ネットサーフィンをしている。


浜崎陽子「うるさいやっちゃ・・・怖いのはみんな一緒やで。
     てか、あんたさっきからオドオドしすぎやで。」


浅田百合「うわわ・・・すいませーん・・・だって・・・怖いんだもの・・・うえぇぇん!」


浜崎陽子「ちょっとちょっと・・・泣かんとってや!うっさいなぁ!
     泣きたいのはみんな一緒やっちゅーねん!それよりみんなで脱出方法考えようや!」


高田理子「ちょっと・・・なんであんたが仕切ってんの?
     背がちょっと高いからっていい気になってんじゃないわよ!」


浜崎陽子「チビのくせにさっきから妙に私につっかかってくるなぁ!
     それと、人を見た目で判断するようじゃ全然あかんで!
     そういう奴はだいたい仕事もでけへんねん!
     就活する前にまずその性格を直さなあかんわ!
     面接はその後で受けに行ったほうがええで!」


高田理子「ムッキー!ホント腹立つ女!面接のこと今関係ないじゃん!
     なんでこんなわけわかんない場所で
     あんたみたいなわけわかんない女と一緒の空気吸わなくちゃいけないの!」


安西優子「みなさん・・・冷静になりましょうよ。
     こういう状況で、精神的に追い詰められていらっしゃるお気持ちはよく分かります。
     ですが、今は・・・5人で協力して、解決策を探すのが先ではございませんか?」


安西優子24才独身。上場企業の社長秘書。自他ともに認める美人。
常に冷静で理論派。黒ぶちメガネをかけている。


安西優子「まず、あなたたち2人とも、お互いに謝ったらいかがです?
     5人で協力しないと、きっとここから脱出なんでできませんわよ?」


高田理子「・・・2日酔いの寝起きで・・・いらついてたの・・・ごめんね。」


浜崎陽子「・・・私こそ・・・ひどいこと言ってもうて・・・ごめんな・・・」


安西優子の言葉にはどこか説得力があり、
むきになっていた二人も素直に謝ることができたようだ。


安西優子「2人とも素直でいい子じゃないですか。
     それから・・・そこで震えてずっと泣いてるあなた。
     こういう場で泣かれると、周りを不安にさせちゃいますから。
     無理にでも泣き止んでくださいませんか?」


浅田百合「う・・・うう・・・分かりました・・・ごめんなさい。もう泣きません。」


共通点を探せ。


安西優子「さて、みなさん、まずは私の考えを話させていただきます。
     誰かが何かの意図を持って私たち5人をここに閉じ込めているのなら、
     私たちに5人には何らかの共通点があるはず。
     まずはその共通点が何かを一緒に考えてみませんか?」


浜崎陽子「ちょっとあんた!頭ええなあ!すごいやん!
     学生時代成績良かったタイプやろ?」


高田理子「そんなの、あんた以外は全員とっくに気づいてるわよ。」


浜崎陽子「嘘つくなや!あんたみたいなアホがそこまで頭回ってへんかったやろ?」


安西優子「はい、ストップです。そこのお2人はもう仲直りしたんでしたよね?
     喧嘩はしないでおいてくださいね。


     ではまず、私の詳しい自己紹介をしますから、終わりましたら、
     共通点のある部分をみなさんが言っていく、という流れでいかがでしょうか?」


高田理子「了解!自己紹介お願いしまーす!」


浜崎陽子「ぐ・・・了解や!」


安西優子「わたくしは、安西優子。24才独身。
     平成元年7月12日生まれ。かに座。家族構成は父・母・弟と私の合計4人。
     好きな食べ物は、焼肉・ピザ。嫌いな食べ物はレーズン。
     趣味は、スキューバダイビングとゴルフ。
     仕事は、3年前から上場企業の社長秘書をしています。」


浜崎陽子「社長秘書て!すごいやんけ!せやから言葉遣いがお嬢様みたいな感じなんかいな!
     なあなあ!男関係どんな感じ?その辺もゆーといた方がええんと違う?」


安西優子「・・・・・彼氏は・・・今は5人います。
     初体験は17歳で今までの経験人数は約50人ほどでございます。」


浜崎陽子「ちょっとあんた!おとなしそうな顔して・・・彼氏5人て!
     で、経験人数50人て!てか、そこまで聞いてへんし!
     おもろいやっちゃ!あっはっは!」


安西優子「いや、情報は多いほうがいいかと思いまして。
     そのほうが共通点は見つけやすくなるという思いからです。
     こんな状況で恥も何もございませんわ。死ぬよりましですから。」


浅田百合「はわわわわ・・・・・初体験が17歳で今までの経験人数が50人・・・」


安西優子「もしかしてあなた・・・そこが共通点でございましたか?」


浅田百合「いえいえ・・・あの・・・その・・・私24年間で一度も・・・その・・・そういうことが・・・」


浜崎陽子「おもろいやん!あんた!このご時世に24歳でそういう子なかなかおらへんで!
     てか、あんたもあんたや!なんでここでそんなこと発表すんねん!あっはっは!」


安西優子「あなたさっきから笑いすぎだと思いますよ。
     そんなこと言っている場合ではないのです。
     お互い全てをさらけ出して、今すぐ何らかの共通点を見つけ出さなければ、、、
     本当に私たち5人は危険な状況にさらされると思いますよ。」


浜崎陽子「ホンマにそうなん?テーブルの上には豪華な食べ物が置いてあるがな!
     これ5人で食べても1週間分くらいはあるで?
     危険の逆で、この5人は誰かに歓迎されてここにおるんちゃう?
     じゃなかったら、こない豪華な料理出す意味がないやろ?」


高田理子「確かに・・・閉じ込められてはいるけど・・・危険ではないのかも。
     豪華そうな部屋の真ん中のテーブルに豪華そうな料理。
     歓迎されて集められた5人なのかも・・・」


浜崎陽子「おっ!あんた!初めて気が合うたやないの!
     さっきまでむかつく女や思てたけど、なかなか分かる子やないの!」


安西優子「お二人のおっしゃるように、もし歓迎されていたとしても、
     現段階で私たちがここに閉じ込められているのは事実です。
     どうせ5人でこの密室でやることもないわけですから、
     共通点探しを一生懸命やっておくのが得策だと思います。」


浜崎陽子「・・・せやな。お姉さんのおっしゃる通りですわ。
     共通点探しか。いい暇つぶしになるかもしれへんな!」


その後、5人で共通点探しを続けたが・・・
何1つそれらしき共通点は見つからないままだった。


1日目の夜。


浜崎陽子「はあ・・・疲れた!みんな何もかもバラバラやんけ!
     共通点なんてあらへんやん!」


安西優子「そうですね・・・みなさん、少し休憩しましょうか。
     高田理子さん、今何時ですか?」


高田理子「夜の6時です。」


浜崎陽子「え?もうそんな時間かいな!窓がないから外の明るさも分からへん!
     時間の感覚が全くないわ!
     ってか、お腹減ったから、みんなでこの料理食べへん?」


高田理子「ちょっと!それ食べるつもり?・・・あんたやっぱりバカね!」


浜崎陽子「アホはあんたやで!もしかして毒か何か入ってる思てんの?
     殺すつもりなら、そんなまわりくどいことせーへんて!
     それに同じ殺されるんやったら、美味しいもの食べて死にたいわ!」


高田理子「やめときなって!どうなっても知らないからね!」


浜崎陽子「大丈夫やて!こんな美味しそうな料理食べずにおれるかいな!
     むしゃ むしゃ むしゃ
     これってキャビアやんか!食べてみたかってん!うわー!めっちゃうまいで!」


料理を口にした浜崎陽子の無事を確認した後、
怖がりの浅田百合を除く他3人も料理へと群がる。
全員起きてから何も食べていなかったから腹ペコだったのだ。


浜崎陽子「うわー!みんな私に毒見させてたっちゅーわけか!
     ひどい連中やな!それはそうと、あんた!
     今まで一言もしゃべらんと隅っこに座っとったけど、
     料理だけはちゃっかり食べに来るんやな!」


隅田雅代「・・・・・」


目が覚めてから一言も他の4人と会話していなかった女、隅田雅代。
25才独身。他の4人が話している間も、ずっと大広間の角に座って
うつむいたまま、今だ一言も発していない。


浜崎陽子「なんや!あんた!話されへんのかいな?
     でもあんたよー食べるなー!みんなの分も残しといてや!」


隅田雅代「・・・・・」


一言も発しない隅田雅代。だが人一倍食欲旺盛のようである。
一方、浅田百合は最後まで一口も食べることはなかった。


安西優子「あなたのお気持はよく分かります。
     起きたらこんな来たこともない大広間にいて、
     そこに並べられている料理なんて、とても怪しくて怖くて食べられない。
     しかし、私たちは長期に渡って閉じ込められ続ける可能性もございます。
     体力勝負になる可能性もありますので、少しでもお食べになったほうが・・・」


浅田百合「嫌です・・・私絶対に食べません・・・
     だって毒が入ってるかもしれないし・・・怖い・・・うえぇぇぇん・・・」


浜崎陽子「また泣いてるし・・・もうその子のことはほっときましょ!
     好きなようにさせたったら、ええんとちゃいますか!」


お腹が膨れたら、再び眠気が襲ってくる。
誰からともなく眠りについていく。


高田理子「私だけ・・・今日もこのリクルートスーツで寝ろってことよね・・・
     はー・・・パジャマで寝れるみんながうらやましい・・・
     酒は飲んでも飲まれるなってことね・・・」


次の朝。


一人が目を覚まし、また一人が目を覚まし・・・
全員が目を覚ます。こんな状況だが全員よく眠れたようだ。


それもそのはず。こんな密室に閉じ込められては、
夜はご飯を食べてとっとと寝るくらいしかやることがないからだ。


高田理子「ねー!みんなトイレ行った?すごいよね!
     便座が自動的に自分に合う高さになってくれて!
     クラッシックの音楽も自動で流れてきたよ!
     上流階級のトイレじゃない?優雅な気分でトイレできるよね!」


浜崎陽子「せやねん!ホンマびびったわ!
     でもあれじゃー逆に、出るもんも出ーへんくなるわ!あっはっは!」


安西優子「・・・あら?怖がりの浅田百合さんはどこへ行かれたのでしょうか?
     トイレでしょうか?」


高田理子「え?トイレは今私が入ってたんだけど・・・
     個室が一つしかないよ。だからトイレには入ってないよ。」


隅田雅代が無言のままトイレ以外のドアをガチャガチャと開けようとしている。


高田理子「そうか!トイレにいないってことは・・・
     ドアの施錠が解けて外に出られたってことか!」


4人は3つのドアを開けようとした。
だが施錠は解けてはいなかった。
全く開く気配はない。昨日と同じ状態だ。


トイレの中にもしかして抜け穴のようなものがあるのでは?と、
全員で隅々まで探してみたが、怪しいところは何一つなかった。


浜崎陽子「あの怖がり女・・・一体どこへ行きよったんや?
     トイレにはおらへん。3つのドアも閉まったままや。
     他に隠れれそうな場所もあれへんがな。」


安西優子「私たちが寝ている間に何かあった、と考えるのが一番自然でしょうね。
     ここに私たちを閉じ込めている何者かが連れ去ったのでしょうか。はたまた・・・」


隅田雅代「これ関係あるかどうか分かんないんどすが・・・」


高田理子「え?!あなたしゃべれたの?何で今まで一言もしゃべらなかったの?」


隅田雅代「・・・このしゃべり方が恥ずかしかったどす。
     ・・・だから・・・ずっと黙っていたどす。」


浜崎陽子「ちょっと!『どす』ってあんた!京都弁のつもり?」


隅田雅代「いえ、実は1年前から舞妓さんのバイトをしてるどす。
     だから私生活でも舞妓さん言葉になってしまうんどす。」


高田理子「で?何?さっき何か言いかけてたでしょ。」


隅田雅代「あっはい。これ関係あるかどうか分かんないんどすが・・・
     昨日の夜、みんなでそのテーブルの上の料理を食べた時に・・・
     怖がりの浅田百合さんだけ食べてなかったどす。」


浜崎陽子「うん確かにそうやったな!かたくなに食べることを否定しとったわ!
     それと、あの怖がりがいなくなったことと、何か関係あんのんか?」


隅田雅代「はい、だから、関係あるかどうか分かんないんどすが・・・と言ったどす。」


安西優子「浅田百合さんだけこの部屋から逃がしてもらえた、と考えるべきでしょうか。
     逆に、この部屋から消された、と考えるべきでしょうか。
     プラスに捉えるかマイナスに捉えるか、難しいところですね。」


残り4人


2日目の夜がきた。4人で食事を始めようとした時、隅田雅代が何やら迷っている。


浜崎陽子「いっただっきまーす!あれ?舞妓さん食べへんの?」


隅田雅代「昨日、料理を食べなかったあの怖がりの子だけ、この部屋から消えたどす。
     食べなかったことが関係しているのかは分からないどすが。。。
     食べなければここから脱出させてもらえるのでは?と考えていたどす。
     でも、、、逆に、、、どこか怖いところへ連れていかれるのでは?とも考えられるので、
     食べることにしますどす。」


浜崎陽子「あんた!どすどすうっさいけど、実はなかなか頭ええやんけ!」


安西優子「わたくしもそう思います。ここは、しっかり食べて体力をつけておくのが
     一番無難な線かと思われます。」


隅田雅代「・・・食べすぎたどす。トイレ行ってくるどす。」


高田理子「美味しい料理だけど・・・なんか最後の晩餐食べてる気分になんない?
     明日になったら私たちどうなってるんだろ。
     はぁ、面接落ちまくりで毎日つらい!って思ってたけど、こういう状況に置かれると、、、
     普通が一番!ってようやく気づくね。」


浜崎陽子「あんた!そんなこと考えててもしゃーないやろ!
     今は目の前にあるこの豪華な料理を楽しむことだけ考えたらどうや?
     ほれ!キャビアもうまいけど、このフォアグラも最高にうまいで!」


高田理子「あんたさープラス思考っていうかバカっていうか・・・そういう人うらやましいわ・・・」


浜崎陽子「なんやてー!あんたを元気づけようと思て言うてんのに!このひねくれ女!」


高田理子「ひねくれ女って?私のどこがひねくれてんのよ!」


安西優子「ねえ・・・あの子がトイレに入ってからだいぶ時間が経ったように感じますけど。
     気のせいかしら?」


浜崎陽子「大きいほうなんちゃう?ホンマよー食べとったからなあ!」


トイレのドアのノックしに行く3人。ノックに返事はない。
声をかけてみても返事が一切ない。物音すらしない。


仕方なくドアを開けようとしてみると、、、
なんと、トイレのドアには鍵がかかっていなかった。


浜崎陽子「ちょっとあんた!トイレは鍵くらいしたらどな・・・・・
     おらへん!舞妓さんおらへんで!」


高田理子「・・・・・」


安西優子「・・・・・」


隅田雅代がトイレに入ってからは、3人で話しながら食事をしていた。
3人のいた場所からは当然トイレのドアは見えるので、
隅田雅代がトイレから出てきていたら絶対に気づくはずだ。


トイレの中には、人が出入りできないほどの小さな窓しかない。


浜崎陽子「え!え!え!ちょっと理解でけへんねんけど!舞妓さん消えたってことかいな?」


安西優子「そういうことになりますね。これで1人目にいなくなった怖がりの浅田百合さんも
     私たちが寝ている間に、何者かがドアを開けてそこから脱出したのではなく、
     消された?・・・という可能性が高くなりますわね。」


高田理子「消されたって・・・全然意味わかんないんだけど!」


浜崎陽子「ちょっとちょっと!やばいやん!次は誰が消されんねん!
     うちってことはないよな?だってうち普段の行いめっちゃいいもん!」


高田理子「どこがだよ・・・」


残り3人


安西優子・浜崎陽子・高田理子の3人が残った。


高田理子「舞妓さんが消えたってことは・・・料理を食べなかったから1人目の怖がりな子が
     消えたっていうことではないのね。ってことは・・・あーもー分かんない!」


安西優子「とりあえずできることからしていきませんか?
     まずはトイレはできるだけ我慢した方が良さそうだと思いますがいかがでしょうか?
     現実にトイレで消えた人がいるわけですから。」


浜崎陽子「ちょっとちょっと!そんなん無理やって!我慢にも限界があるやろ!
     だから・・・みんなで一緒に入って順番にしていくゆーのはどない?
     あんま気持ちのいいものではないけど、この緊急事態や!しゃーないやろ!」


高田理子「はあ・・・またバカなこと言って・・・順番にって・・・
     ん?・・・順番に!?・・・・・分かったあああああああああ!」


浜崎陽子「なんやいきなり!でっかい声だして・・・ビビるわ!」


高田理子「ふっふっふ。謎は・・・謎は全て解けた。」


浜崎陽子「何すかした顔で言ってんねん。探偵ドラマの観すぎちゃうか?
     ・・・・で、何が分かってん?」


高田理子「年齢の順番だよ!5人は年齢が1つずつ違う。
     最初に共通点探しした時の自己紹介でも、
     偶然にしては出来すぎだなーって思ってたんだよね!


     浅田百合26歳
     隅田雅代25歳
     安西優子24歳
     浜崎陽子23歳
     高田理子22歳


     年齢の高いもん順に・・・2人消えた!」


浜崎陽子「ホンマや!あんたアホや思てたけど!よーきづいたなー!
     ・・・てことは・・・次は・・・」


安西優子「私ということになりますね。年はとりたくないものですねーおっほっほ。」


浜崎陽子「こんな時に全然おもんない冗談言ってる場合かいな!」


安西優子「おーっほっほ。」


浜崎陽子「あかん・・・次が自分って分かって頭おかしなってんちゃうか?
     この線でいくと・・・あんた22歳やから最後までここに残るいうことになるで?
     最後までここに残るんが悪いことなんかは知らんけどな?
     ・・・・・・・・・・あれ?」


浜崎陽子と安西優子は話している間、高田理子から目を離していた。
その間、約10秒くらいであっただろうか。
10秒目を離した隙に、高田理子は消えてしまっていた。


浜崎陽子「うぎゃーーー!なんであいつが消えんねん!一番年下やのに!
     年齢の順番なんて関係あらへんがな!何が『謎は全て解けた。』や!
     全然解けてへんやんけ!ぼけー!」


安西優子「・・・・・」


残り2人


安西優子「ついに2人になってしまいましたわね。」


浜崎陽子「せやな!もうここまできたらなるようになれやな!
     どうにでもしてくれって気分!」


安西優子「そうですね。でもどうせ消えるのであれば、
     できる限りのことはしておきたいですよね。」


浜崎陽子「できる限りのことって・・・なんやねん?」


安西優子「部屋の隅々を調べてみてはどうでしょうか?
     何か仕掛けのようなものがあるかもしれませんもの。」


浜崎陽子「そないなことして、どーにかなるとも思われへんけど・・・
     まあどうせ何にもやることないしな!じゃあ調査開始!
     あんたはあっちのほう担当!私はこっちのほう担当な!」


安西優子「お待ちください。高田理子さんが消えたのは少しの間、目を離した隙でした。
     もう何が起こるか分からない状況です。
     2人で一緒に調査するというのはいかがでしょうか?」


浜崎陽子「せやな!でも一緒にって・・・手でも繋いで仲良く調査かいな?」


安西優子「それはやめておきます。関西弁がうつっては困りますので。
     私があなたの1メートル横を歩きながらの調査ということでいかがでしょうか?」


浜崎陽子「関西弁をバカにすんなや!ってかあんた・・・うちに初めて毒吐いたな・・・
     さすがのあんたもこの状況で冷静ではおられへんってことかいな?
     切羽つまってるゆーことかいな?」


安西優子「では調査開始いたしましょう。」


浜崎陽子「無視すんなや!」


部屋の隅から隅まで調査を始めた2人。1メートルの距離を置いているものの、
横に並んで調査することで、お互いのことは常に視野に入っている。


開かずのドアの周辺、トイレの周辺、
その他ありとあらゆるところを2人は調査していく。


浜崎陽子「ふと思たんやけど・・・ホンマにあんたがおってくれて良かったわ。」


安西優子「・・・どうしたんですか?いきなり。」


浜崎陽子「いや、あんたがうまいことみんなを冷静にまとめてくれてたわ!
     こういう精神的に追い詰められる状況やからこそ・・・
     内部分裂して女同士で殴り合いの喧嘩になっとったかも分からへん!」


安西優子「あなたにそういうこと言われると、なぜかとても嬉しいですわ。
     ありがとうございます。さて・・・最後に・・・暖炉を調べますか?」


浜崎陽子「怪しいと思ててんなー。この暖炉。
     でもマキがいっぱい入ってて中には入られへんよね。」


安西優子「・・・ちょっと中に手を突っ込んでみますわね。
     奥の方に何かあるのかもしれませんもの。」


浜崎陽子「ちょっとあんた!無茶はせんときや!」


安西優子「やはり何もないですね。調査を続けま・・・」


暖炉に手を突っ込んでいた安西優子。
振り返ると・・・もうそこに浜崎陽子はいなかった。


手を突っ込む前にいつもの元気な関西弁を確かに聞いた安西優子。
手を突っ込んでいた時間はわずか3秒ほど。


「ちょっとあんた!無茶はせんときや!」
最後に聞いた関西弁は優しさあふれる関西弁だった。


安西優子「ついに・・・私1人・・・いや!いやよ!一体何が起きるの!」


1人取り残され、ついに冷静さを失ってしまう安西優子。


残り1人


安西優子「私以外が、全員いなくなった!みんなどうなったの?!
     なぜ私だけ残っているの!?これからどうなるの?うわわわわ・・・」


すでに、普段の冷静で理論派の安西優子ではなくなっていた。


「ガガガガガ・・・」


何をしても開かなかった正面のドアがゆっくりと開く。


「パチパチパチパチパチ・・・おめでとう!安西優子さん!」


中から、胡散臭い80年代のプロデューサー風の男が拍手をしながら出てきた。
肩にカーディガンを羽織っている。今時めずらしいファッションだ。


「パチパチパチ!」


安西優子「なんなんですか?あなたは誰ですか?」


「私は、二宮グループ御曹司の二宮圭介(にのみやけいすけ)。
 日本一の金持ちといっても過言ではないでしょう。
 いやぁー照れるなー!はっはっはっ!


 このたび、嫁を募集することになりまして、嫁選びのために
 お金をかけて、このようなマネをしてしまいました。
 驚かせてどうもすいませんでした。


 まずは、日本全国の津々浦々の若い女性の中から、
 私の好みのタイプの女性を選んでいき、5人に絞りました。


 そして今回、最終選考をこの大広間にて行いました。
 全身の『無駄毛の生える速度』を隠しカメラでズームアップ!
 ずっと観察していました。」


安西優子「・・・・・無駄毛の生える速度?」


二宮圭介「え?女性を選ぶ時に一番大事なポイントじゃないですか。?
     だからこそ、こんなにお金をかけて何十時間もみなさんを閉じ込めてたんですよ。


     無駄毛の処理ができない状況で何十時間も観察してみないと、
     無駄毛の生える速度が正確にはわかりませんからね。」


安西優子「無駄毛が速く生える女性が好きということでしょうか?」


だんだん冷静さを取り戻しつつあった安西優子。
口調も元通りの丁寧な感じに戻っていた。


二宮圭介「ただ無駄毛が濃い女性というのは苦手なんですよ。
     きちんと処理はして欲しいんですよね。


     そして、1日後・2日後にチョロチョロっと生えてきている無駄毛が私の大好物なんです。
     あのチクチクした感じがもうたまらないんです。


     そしたらまた剃って、再び1日後・2日後のチクチクした感じを楽しみたいんです。
     だから私が女性に求める第一条件が『無駄毛が速く生える。』ことなんです。」


安西優子「・・・・・・・・。で、他の皆さんはご無事なのでしょうか?
     どうやってみなさんを消していかれたのでしょうか?」


二宮圭介「この娘ないなーと思う女性からリタイヤしていただきました。
     ボタンを押すと、この部屋のいたるところにある落とし穴が開き、
     地下へ落ちるようになってるんです。


     もちろん、下には、たっぷりクッションを敷き詰めてあるので一切怪我はしません。
     リタイヤした4人には、豪華なお土産を持たせて上機嫌で帰っていただきました。


     1人目の浅田百合。この娘はもう最悪。脱毛クリニックで永久脱毛してますね。
     1日たっても全身のどこからも全く無駄毛が生えて来ない。論外です。


     2人目の隅田雅代。この娘は脱毛サロンに通って光脱毛の途中ですね。
     おそらくあと3回通って脱毛完了するぐらいの感じでしょう。
     すでに無駄毛が薄くなってきているので、この子も論外です。


     3人目の高田理子。この娘は腕毛・すね毛の生える速度は完璧でした。
     ですがワキだけ脱毛完了していました。全く生えてこない。
     これは致命的です。他の部分が完璧だっただけに、おしい娘でした。


     4人目の浜崎陽子。この娘は全身の無駄毛の生える速度は完璧でした。
     非のうちどころがなかった。安西優子さん。あなたと互角の戦いでした。


     無駄毛の生える速度での勝負が互角ということで、、、
     最後にあなたを選んだ決め手は、、、『言葉』です。


     浜崎陽子さん。彼女の下品な関西弁と、あなたの上品な言葉を比べたとき、
     この二宮グループ御曹司二宮圭介の嫁としてふさわしいのは、あなただ。


     確かに、浜崎陽子さんも無駄毛の生える速度は完璧だった。
     だが、あの下品な関西弁ではねー・・・この二宮圭介には合わない。


     というわけで安西優子さん。
     最終選考の結果、あなたが私の嫁に選ばれました。
     本当におめでとうございます。


     あと最初の自己紹介のくだりで聞こえてしまったのですが、、、
     今付き合っている彼氏5人とはもちろん別れてもらいます。


     私と結婚できるのですから、そのくらい当然ですよね。


     では、、、ま、、、返事は聞くまでもないと思いますが、一応形式上聞いておきます。
     どうかこの日本一金持ちの男『二宮圭介』と結婚して欲しい。」


二宮圭介は、後ろに隠していたバラの花束を差し出し、
ズボンのポケットからは、豪華な1,000カラットのダイヤの指輪を差し出した。


安西優子「おい!ド変態!話長いねん!お前なんかと結婚するわけないやろ!どアホ!
     それからな!関西弁バカにすんなや!この変態が!」


( 関西弁ってこんな感じだったでしょうか?浜崎さん。 )


世にも毛妙な物語【第四話 脱毛ルーム】完


世にも毛妙な物語 目次


第一話 オールフリーという名の脱毛サロン
第二話 ムダ毛の価値観
第三話 ウブ毛の記憶
第四話 脱毛ルーム ← 今あなたが見ている毛妙なページ
第五話 悪戯なムダ毛