世にも毛妙な物語 目次


第一話 オールフリーという名の脱毛サロン
第二話 ムダ毛の価値観
第三話 ウブ毛の記憶
第四話 脱毛ルーム
第五話 悪戯なムダ毛 ← 今あなたが見ている毛妙なページ


2013年 6月21日 深夜


「このドラマ・・・おもしろすぎる!」


川崎真美(かわさきまみ)高校3年生。
お気に入りの深夜のテレビドラマを自宅の自分の部屋で見ていた。
真美は、このドラマが大好きで、毎週欠かさずチェックしている。


その時、携帯に着信が鳴る。


「こんな夜中に誰よ!・・・・??・・・・・え?」


ディスプレイには自分の携帯番号が表示されている。


「え? 何?・・・なんか怖い・・・」


全く鳴りやみそうにない着信音。
怖いが・・・出てみることにした。


「も・・・もしもし・・・」


「お願い、切らないで。私の話を最後まで聞いて。」


中年の女の声だ。


「何から説明すればいいのか・・・
 まず・・・私は・・・あなたなの。」


「はっ?」


「正確にいえば、未来の・・・20年後のあなたなの。
 20年後に、過去の携帯へ電話がかけられるアプリができてね。
 今それを使ってるの。


 ディスプレイに着信番号が表示されていて、
 自分の番号だったから驚いたでしょう。
 機種は変えても、ずっと番号変えてなかったから。」


(こりゃ完全におかしい女だ。。。もう切ろう。。。)


「お願い、切らないで!普通、信じてもらえないよね。
 ええっと・・・何か証明する方法は・・・・・


 えっとたしか・・・今ドラマ見てたよね。
 そのヒロインが二股かけていることが今回発覚するよ。
 あんまりおもしろくないから、もう見なくていいよ。」


テレビに目をやると・・・ちょうど二股が発覚したところだった。


(あれ。。。これ再放送だっけ?違うよね。。。)


「とにかく信じなくてもいいから、話を最後まで聞いて。
 今の私は、とても不幸な状態にあるの・・・
 その不幸の原因が・・・明日のあなたのムダ毛だったの。」


(これは。。。新しいタイプのオレオレ詐欺か何かなのか?。。。)


不幸の原因。


「実は今の私・・・ものすごく不幸な状況にあるの・・・
 夫の勤め先の自動車会社が倒産してしまって・・・


 で、悪いことは重なるもので・・・


 ネットバンクウィルスとかのせいで、
 銀行に預けてた全財産も失ってしまった・・・


 私は今まで悪いこともしないで、真面目に生きてきたつもりよ。
 それなのにこんなに不幸になるなんて絶対おかしい。
 そう思って徹底的にこの不幸の原因を調べてみたわ。


 そして、ついにその原因をつきとめたの!
 全ての不幸の原因は、明日のあなたのムダ毛にあるの!


 明日、学校で絶対ムダ毛を抜いちゃだめ!
 お願いだから抜かないで!」


(そろそろ限界。。。電話切ろうかな。。。。。)


2033年 ある悪党の会話。


「さすが江藤の兄貴。頭がいいです。
 こんな方法で稼げるんですねぇ・・・


 意図的に株価暴落させて・・・それで金を稼ぐ。
 銀行襲うより、格段にローリスクで、がっつり稼げる。


 株って、上がらなくても稼げるんすねぇ。
 空売りってゆうんですか・・・知りませんでした。」


江藤「簡単なことだぜ・・・」


「ホント頭いいすねぇ・・・いや、なにより・・・
 自分の買った電気自動車をいじって、
 完全に企業側の初期不良にみせかける技術がすごいっす。」


江藤「あの会社は近い将来、倒産に追い込まれるだろうな。
   高校中退だが、電気のことは昔からなぜか得意でな。
   ちょっと専門書読みゃ、これぐらい簡単だ。


   ちゃんと学校行ってりゃ・・・今ごろ・・・
   どっかの大学の教授にでもなって、
   電子工学かなんかの講義してたかもな!」


「兄貴が教授?!ぎゃははははは!」


2033年 ある悪党の状況。


10代の頃、あることが原因となり、人間不信に陥った山田は、
20年たった今でも、引きこもり生活をしていた。


他にすることもない山田は、当然のようにパソコンにはまり、
中でもプログラムを組むことの面白さに目覚める。


そんな山田は、最近非常に困った状況に陥る。


両親がともに病気で他界し、生活費がなくなってしまったのだ。
今までは親のすねをかじって生活していた。


ネットで稼ぐ方法は、いろいろあると思うのだが、
一切他人を信用しない山田は、違法なことしか思いつかない。


プログラムの知識を悪用し、ネットバンクウィルスというものを開発。
特定の人間の口座のお金を自分の口座に移動させる恐ろしいウィルスだ。


2013年 6月22日


意味不明な数字が永遠と並ぶ数学の授業。
川崎真美は数学が大の苦手だった。


(あー暇だなー・・・むむっ!剃り残し発見!)


腕に剃り残しのムダ毛を見つけた。
プチ!っと抜いて、ふっと息で吹き飛ばす。
暇すぎてこれぐらいしかやる事がない。


ひらひらひらー


風に乗って小さなムダ毛が教室を舞う。


ひらひらひらー


運命の糸にもてあそばれるかのように
ある人物の元へ引き寄せられていく。


居眠り中のおっとりデブ山田


彼の鼻の中へ吸い込まれていく。


「へっへっへっ・・・へっくしゅん!」


前の席には、普段はあまり学校へは来ないが、
今日はたまたま登校していた学校一の不良、江藤がいた。


江藤は昨日床屋へ行ったばかりで、
お気に入りのリーゼントをムースでバッチリ決めていた。


そのリーゼントに、デブ山田の鼻水がビッチョりついた。


普段なら、江藤でも教師のいる授業中に手を出しはしない。
しかし、今回は別だった。


「お・・・お・・・お前・・・俺の散髪したてのリーゼントに!」


怒りMAXの江藤は誰にも止めることはできない。
気づいたら山田を殴り倒していた。


授業中の暴行。被害者の山田は額を何針も縫う大怪我。
江藤は、このことがきっかけとなり、高校を中退。


定職にもつかず、次第に闇の世界へ入っていくことになる。


一方、両親にとても大切に育てられてきた山田は、
誰かに殴られるということが初めてだった。


完全に人間不信に陥り、不登校になり、そのまま引きこもりへ。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・・・というわけなのよ。
 あなたのムダ毛が二人の人生を変えてしまうの。
 すべての原因は、明日のあなたの毛なの。」


一通りの説明が終わり、最後にもう一度念を押されてから電話は切れた。


(今までの話。。。やけに真実味がある。。。
 これが、未来の私からの電話なんて。。。信じられないけど。。。
 とにかく明日は、毛は抜かないようにした方が良さそうだ。)


実験


今日は数学だけでなく全ての授業で毛を抜かないよう心がけた。


デブ山田はくしゃみをすることはなかった。


不良江藤も、もちろん山田を殴ったりしない。
ただ、リーゼントをしきりに触っている。
相当気に入っているのだろう。


5時限目、化学。


今日の化学は電気の実験。私は学校の勉強は嫌いだったが、
化学の実験だけは大好きだった。なんかワクワクするからだ。


今日は電気を使って強力な磁石を作ってみるという実験だった。
出来上がった磁石は本当に強力で、引っ張ってもとれない。


みんなで一緒になって思いっきり引っ張っても、
完全に磁石同士がくっついていて、全然とれる気配はない。


そこで化学の三島先生が、教室の隅で実験そっちのけで、
リーゼントをおもむろに触り続けている江藤に声をかけた。


「おい!江藤!お前の力ならこの磁石とれるか?」


教室内に緊張が走った。
不良江藤は、手は出さないものの教師に反抗することは日常茶飯事。


今では全ての教師が、江藤が授業中に何をしていても完全スルー。
さわらぬ神にたたりなし、というやつである。


しかし、化学の三島先生だけは違っていた。
毎度のように江藤に声をかけ、反抗してきても気にする様子はなかった。


今回もいちゃもんをつけて教室を出ていくのがおちだろう・・・
と見ていると、江藤は意外にも素直に磁石を引っ張り始めた。
そして、みんなで引っ張ってもとれなかった磁石を簡単にとってしまった。


「江藤!お前すごい力だな!さすが校内一番の悪だな!」


「るせーよ!三島!こんくらい余裕だよ!」


「お前の力がすごいのは分かった!それはそうと・・・
 もしかしてお前、磁石作るもの上手かったりするんじゃないか?」


「・・・・・ちょっとやらせてみろよ・・・」


三島先生は江藤を授業に参加させたいがために、
わざと江藤を褒めて、やる気を出させたのだろう。


しかし、江藤は本当に磁石を作るのが誰よりも上手かった。


この日をきっかけに、江藤は勉強の面白さに目覚め、完全に更生することとなる。


デブ山田は、あいかわらず、のほほーんとした性格で、
他人を疑うことを知らないまま高校を卒業した。


別の未来


それから、20年。


江藤は、大学・大学院へと進学し、電気工学の教授になっていた。
また、電気自動車を三産自動車と共同開発し、
その過程において、革新的な技術開発をすることとなった。


そのことでライバル社である川崎真美の夫の自動車会社は
業績不振で倒産に追い込まれることとなった。


山田は、高校卒業後、進学せずにそのまま就職。
羽毛布団の訪問販売の会社で飛び込み営業の仕事を始めた。


しかし、のほほーんとした性格の山田には、
飛び込み営業の仕事は全く向いておらず、
布団を1つも売ることができず、その仕事は辞めることに。


新しい仕事を探すため、就職活動を始める。
面接へ行く日以外は暇なため、家にあるパソコンをいじっていた。


ふとしたことでプログラムの面白さに目覚め、
独学でプログラミングの技術をマスターしてしまう。


その後は、IT関連企業でプログラマーとして活躍。


人とのコミュニケーション能力はあまり高くない山田。
しかし、プログラムの仕事は山田には向いていたようである。


そんな山田だったが、ある時、仕事仲間から、
借金の保証人になって欲しいと頼まれる。


人の良さから、それを了承してしまい、
莫大な借金を背負うこととなってしまった。


借金を返す手段として、プログラム技術を見込まれ、
ネットバンクウィルスをつくるように強要される。


その後、そのネットバンクウィルスによって、
川崎真美の銀行の全財産は奪われた。


夫の会社は倒産し、銀行の全財産もなくなった。


本当の不幸の原因。


あの日のムダ毛が全ての不幸の原因だと思っていた。
だが・・・結局・・・同じ結末となった。


もう一度、考えてみることにした。
この不幸を取り除くには、どうすればいいのか?


・・・・・違う人と結婚していたら?


再び、私は過去の自分に電話をかけられるアプリを起動。
13年前、結婚する前日の自分に電話をすることにした。


「も・・・もしもし・・・」


「あなた・・・明日結婚しちゃダメよ。
 今の不幸の原因は・・・明日の結婚なのだから。」


「・・・あんた頭おかしいんじゃない?」


世にも毛妙な物語【第五話 悪戯なムダ毛】完


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第一話 オールフリーという名の脱毛サロン
第二話 ムダ毛の価値観
第三話 ウブ毛の記憶
第四話 脱毛ルーム
第五話 悪戯なムダ毛 ← 今あなたが見ている毛妙なページ